立秋の匂いと記憶 2021.8.7

立秋の前日。
大きな木陰の下に座り、カサカサと音を立てながら風になびく木の葉を眺めながら、風が運んでくる匂いを一気に吸い込む。少し湿っていて、青々とした草の匂い。夏の日の夕方の匂い。でも、少しだけ秋に向かっている匂い。
この匂いを忘れたくなくて、風が吹いてくる方向に身体を向けて、全身で風を浴びる。

風が運ぶ季節の匂いは、昔の記憶を蘇らせる。だいたい小学生〜大学生くらいの記憶がパッと一つのシーンとして浮かんでくる。この前は、大学生の頃に秋のキャンパス内を一人で歩いていたシーンだった。夕方、図書館を出て帰る頃だと思う。
昨日の風は、実家の部屋の窓からよく眺めていた夏の終わりの空だった。

今日は立秋。
日中はどこが秋なのか、と突っ込みたくなるほどの暑さ。だけど、やっぱり朝晩の空気が少しひんやりしている。
昨日木陰で思いっきり吸い込んだ風は、凄く凄く良い匂いだった。