はじまり 2021.7.29
少しだけ暗闇が薄れてきた早朝の3時半過ぎに家を出て、車で友人を迎えに行った。高原についた頃は4時半頃で、うっすらと靄がかかっていた。まるでトレーシングペーパーで世界を覆っているかのようなぼんやりさだった。
左右に見える高原の丘を何十頭の鹿の群れが走っていった。きっと私の車に驚いたから。柵を飛び越えるのに失敗した小鹿もいて、少し痛そうだったけど、2回目のチャレンジで飛び越えるのに成功して、柵を飛び越え左から右の高原へ移っていった。
この時間の高原は未知だった。夜の間に活発に動いていた動物たちが、暗闇が明けてきた頃には別の動きを始めるようだった。馬たちは、朝露で濡れる草を食んでいた。靄がかかっていたけど、そこには馬のシルエットが点々と在り、草を食む音が聞こえた。彼らは特段いつもと変わりないけど?という感じで、私たちが一緒にいても何かを変えることはしなかった。
1分、1秒ごとに空や光が変化していた。空全体が雲に覆われていたけど、あそこに太陽が出てきたな、と思える方向の空はうっすらオレンジ色。そこから西にいくにつれて、グレーよりの青みがかった色だった。どこから色が違っているというわけでもなく、段々に、曖昧に違っていた。
雲の隙間から太陽が顔を出すと、光と温かさが高原を覆った。光に当たった馬たちの毛はきらきらしていた。視界が眩しくなり、冷えていた顔がぽかぽかした。ぼんやりしていた馬たちの群れが徐々に動きだした。太陽に当たりながら、始まりという空気を感じた。
毎日決まって太陽が昇る。そして同じ色は二度とない曖昧な色の変化が起こる。どちらも自然で、どちらも同じだと思った。私もそんなふうで在りたい、とも思った。