知っているつもりで知らないこと 2021.10.14

遠野には雲海が見える展望台がある。
今まで何人かの方におすすめされたことはあったけど、実際に行ったことなかったし、そこで雲海も見たことがなかった。
ただ、雲海が見える展望台がこの町に存在することだけ知っていた。

それが、先日のはじめ、友人に誘われて雲海を見に行くことになった。
せっかくならばと、パンとスープとハーブティーを持って二人で早朝に展望台を目指した。

展望台への道を指す案内看板のようなものを頼りに、霧の中クネクネとした山道を友人の愛車ジムニーで登った。
深い霧で10m先が見えないような道を、今日は雲海が見えるのだろうか、という少しの不安と共に進んだ。
結構な山道を登っていくと、急に木々の隙間から眩しい朝陽とその下に広がる雲の海がチラッと見えた。

この展望台から見える雲海は一体どんなものなのか。
そもそも雲海についての知識がほとんど無いなかで、一瞬見えたそれは、拝みたくなるほど綺麗だった。
そして展望台までいくとどれほどのものなのか、一気に楽しみになった。

無事に展望台まで到着すると、さっきまでの霧が嘘のように無く、ダウンコートと首巻をしているくらいでちょうど良い気温だったけれど、煌々と指す朝陽のおかげで車内よりも暖かく感じた。
既に駐車場には、数台の車があり思いのほか人がいた。

展望台から見える雲海は、凄かった。
時おり、真下に見える森の中から聞こえる動物の鳴き声は聞こえるもののとても静か。
町全体が広大な雲に覆われていて、大きな太陽が照っており、おめでたいような気持ちになった。

この町に住んで2年ほど。
いろんなことが見えてきて、町外の友人におすすめできるお店やスポットもできた。
だけど、まだまだ知っているようで知らないことがあるんだと、雲海を拝みながら思った。

雲海を堪能した後、高原まで車を走らせた。
朝陽を浴びて微睡む馬たちの隣で、持ってきたパンとハーブティーを食べた。
行き慣れた高原は、雲海から続く物語のような時間になった。